外山滋比古"知的創造のヒント"

昨日と今日は移動の時間があったので、外山滋比古"知的創造のヒント"(ちくま学芸文庫,2008)を一気に読了。今話題になっている同じ著者の"思考の整理学"はパラパラっと眺めて以前に読んだことがあるのを思い出したので、こちらを手に取ったら魅力的だったので購入したのだけど、やはりそういうタイミングで読むとアタリなことが多い。

最近しばらくの間、"'考える'とはどういうことか"や、読書や勉強により"知識をつけること"と自分の頭で"考えること"はどう違うのかということなどについて、つれづれに考えていたときだったので、まさしくそのことをテーマにしている本書は見事にはまったのだった。

以下、読みながら印象に残った箇所からいくつか。

人間にとって価値のあることは、大体において、時間がかかる。即興に生まれてすばらしいものもときにないではないが、まず、普通は、じっくり時間をかけたものでないと、長い生命をもちにくい。寝させておく。温めておく。そして、決定的瞬間の訪れるのを待つ。そこでことはすべて一挙に解明される(p.13)

もともと私は短気でせっかちな性質であることは自覚しているけれど、それでも最近は種々様々なことがらについて"放っておくこと"の大切さや熟成することの必要について、理解しつつある。そしてできれば将来博士論文を書きたいと計画するならば、今から少しずつでもその周辺につながる色々なことに思いをめぐらせておくことが必要であることも気づいている。

ものを考える習慣をつければ、めいめいに自分だけの思考法がおのずから育つはずである。それが思考のスタイルである。われわれはこれまで思考の方法を求めるのに急であって、人によって異なる個性を反映した思考のスタイルを育てるのに、いささか怠慢であった気がする(p.15)

これも最近気がついたことに近い内容で、以前は所謂目標としている人びとと同じようになりたいと願っていた時期があった。だけど所詮自分は自分以上でも自分以下でもないことに気がついたので、なんというか"わが道を行く"覚悟ができたのだった。

ユーモアのあるわかりやすい話をする方には比喩が上手な方が多いと思っていたけれど、その理由も本書で解けた。本書自身にも比喩がたくさん用いられており、そのために楽しいリズムがある。

比喩とは少し違うけれど電車のなかで思わず噴出したのが下記の一説。朝食は抜いた方が、"頭の血が胃へ出張することもない"ので"何でも考えられるから、仕事もどんどん進む"という話のあとでの文章。

そうは云うものの、やはり、朝食はとった方がよさそうである。年をとって、そう思うようになった。朝食前の仕事をするには、その分早く起きなくてはならないが、よくしたもので、年をとると、だんだん朝が早くなる。食べても朝食前の時間は長くなるのである(p.79)

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫)

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫)