"人生と仕事の段取り術""6時に帰るチーム術"

小室淑恵"人生と仕事の段取り術"(PHPビジネス新書,2010)を読んだところなかなか興味深かったので、ついでに小室淑恵"6時に帰るチーム術"(日本能率協会マネジメントセンター,2008)を読んでみた。両方とも読みやすい本なので、あっという間に読めてしまう。

小室氏は自分の妊娠と出産を発端に、"ワークライフバランスの視点によるマネジメントの有効性"に気がついた、と書かれているけれど、私自身もやはり5年前のポコンたんの妊娠と出産をきっかけに仕事への取り組み方を変えることに成功した。結婚、妊娠、出産がなければ、私自身も長時間労働と仕事を抱えることに仕事の価値を見出す典型的な仕事人間から抜けることはなかっただろう。おそらくそういう方は男女問わずに多いのでは??

仕事と大学院の二足の草鞋を履いていた当時はかなりの力技で両立をしてきたし、留学から帰国した後は仕事を相当に重視した生活を送ってきた。5年前には妊娠後も、普通と変わらずに仕事をしていて、結局ある日突然入院する羽目に陥った。当時は、周囲も私が休むことになるとはおそらく考えてもおらず、自分も全く予想していなかったので、ほぼ完全なひとり仕事だったので、5年前の入院時には業務に大きな穴をあけてしまった。

その後、ポコンたんを出産し、産休後に復帰した後は、ポコンたんは健康優良児で呼び出しや病欠等は少ない方だけれど、それでも子どもがいるといつ休まなくてはならない状況に陥るかわからないし、残業もままならない。当然時間の使い方をそれまでと変えなくては、仕事も家庭もまわらなくなる。

恥を忍んで告白すれば、それでも少し前までの自分は、例えば緊急の案件で自分の休みのときに連絡が入ることについて、それが自分が重要な仕事を担当している勲章のような大きな錯覚を起こしていた。今考えると本当にばかばかしい勘違いも甚だしいのだけれど、おそらくそういう勘違いをしているヒトは多いような気がする。

だけど実際には、休みのときに仕事の連絡が入る状況になっているということは、自分が情報の共有や業務の分担をうまく行えていないことの現れであり、仕事が属人的になっていることの証拠ではないのだろうか。それは組織の問題でもあるけれど、ある程度仕事の分担を裁量できるポジションにいる場合には自分自身の仕事の仕方の問題である*1

そのことに気がついた時点から、自分の業務についての情報共有や報告、特に文書による報告や書類の場所を周囲に伝えておくこと、をそれまで以上に心がけ、仕事を属人的にしないことを密かな目標としている。

今回突然の病欠になってしまい、業務に支障をきたし上司をはじめ周囲には多大な迷惑をかけた。ただ5年前ほどの致命的な支障にはならず、休んでいる間の問い合わせ等もほとんどなかった。連絡があった案件については、まだ情報共有が十分でなかったことなので、その辺は今後の課題の部分になるけれど、でも自分なりの取り組みは多少なりとも功を奏したように感じている。

"ワークライフバランス"の"ライフ"については、育児や介護と仕事との両立が一番注目されているけれど、そうではなく例えばキャリアアップのための勉強や、趣味なども含めて人生を充実させる時間の遣い方だと思う。そのために"ワーク"の時間の効率的に遣うことを考えること、それが"ワークライフバランス"の肝なのではないだろうか。

勤務先法人でも時折勘違いされているように思うけれど、決して残業を減らすことが目的なのではなく、結果的に残業が減るだけなのだ。また別の勘違いをされているように、仕事を手抜きすることの推奨では決してない。組織や職場のためではなく、自分自身の人生を豊かに過ごすために"時間の遣い方"を考えること、そこに"ワークライフバランス"の考え方があるのだと思う。

まあ、ただ私は、上司陣が業務効率化の必要性を理解している部署であることや、事務職はある程度自分で業務の調整を行えることなど、恵まれた環境なのだろうな。長時間労働を評価する上司の下で働く場合や、医師のようにどうにもならない職場だったら、とても考えられない話になるのだろう。だから、"ワークライフバランスの視点によるマネジメント"と、マネジメントに重きが置かれているのか、といまさらながら小室氏の表現に納得。

人生と仕事の段取り術 (PHPビジネス新書)

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なぜ、あの部門は「残業なし」で「好成績」なのか? 6時に帰る チーム術

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*1:※本当のトップになると責任が属人的にならざるを得ないという側面は否めないけれど。