石井光太"地を這う祈り"

数日前に書店の店頭で表紙のインパクトにひかれて、衝動買いした石井光太"地を這う祈り"(徳間書店、2010)を読了。帯の"写真と文で抉り出す、世界最貧層のむきだしの姿−魂を揺さぶられる衝撃ノンフィクション"という文言に偽りはなく、脳みそをなぐられるような衝撃を受けた。

本書には、インドやネパールのストリートチルドレン、スリランカの赤ちゃん売買、知的障害をもつ女性の売春、ドラッグ、臓器売買などの"現実"が簡潔な文章が写真とともに掲載されている。まるでエッセイみたいな淡々とした文章だけど、そこに写真があることで、どれほど言葉を尽くしても伝わらない"リアリティ"がある。その場面を切り取ることで、映像よりも豊かに語る。これが写真の力だなぁとあらためて感じた。

子どもをもつ母親として最も衝撃的だったのは、エチオピアのストリートチルドレンが食べ物がないためにシンナーを吸って新聞紙を水に浸して食べており、シンナーなしでは食べ物の味を感じられなくなってしまっているという話。絶句である。

本書を読んであらためて思ったのは、自分にいまできるのは、まずこういう現実があることを知ること、そして忘れないこと。恵まれた環境にいる自分とこのような現実を比べて同情しても何も始まらないので、何よりも自分の目の前の生活を大切に大切に過ごすことだと思う。

他に"社会福祉"というのは社会にある程度の豊かさがないと成立しないということも再認識した。社会福祉制度の成立条件については、後日きちんと整理しておかなくては。

あとがきを読むまで著者は写真家だと思っていたけど、ノンフィクション作家とのことで文章の方がメインらしい。他の著作も読んでみたい。

地を這う祈り

地を這う祈り