"無痛"

数日前の出張の移動中に大半を読んだ久坂部羊"無痛"(幻冬舎文庫,2008)を読了。634頁。難易度:軽。デビュー作の"廃用身"もそうだけど、社会的なテーマを医学の専門知識に混ぜてエンタテイメントに仕上げているで、なかなか読み応えがある。現役の医師とのこと。

"無痛"は、幼児も含む一家惨殺事件を縦軸に、刑法39条問題や心理療法と医学の意味などの問題が交差する。主人公は、外見に現れる徴候だけで完璧に診断ができる中年医師で、まるで現代のブラックジャックがシャーロックホームズになったみたい。

刑法39条は、"心身喪失者の行為は、罰しない。心身耕弱者の行為は、その刑を軽減する"という条文で、私自身も大学院時代に友人たちと議論した記憶がある。この問題を書き出すと長くなるので、省略。

映画やアニメ/漫画など映像/画で、残酷な場面を見るのは割と大丈夫なのだけど、小説で惨殺シーンを読むとくらくらくる。映像は完全に受身だけど、小説は一度自分のなかで想像するという主体的な行為だからかもしれない。そんなわけで冒頭の場面を電車で読んでいて、思わず気持ち悪くなったほど。特に子どもに対する残酷場面の描写には、最近本当に弱い。

ラストの場面からは、同じ主人公のシリーズ化になりそうなので、続編が出たらまた読んでしまうかもしれない。それより先に第二作の"破裂"に手を出してしまいそうだ。

余談だけど、"読書量を「冊」で数えるかわりに「ページ」で数えませんか?"というのは、眼から鱗だったかも。確かに専門書も英書(最近読んでないけど)も文庫も同じ1冊というのは、抵抗がある。そんなわけで今回からページ数と難易度も併せて記録。




無痛 (幻冬舎文庫)

無痛 (幻冬舎文庫)