地域に感謝を

勤務先法人には法人創設者の信念をもとにした4つの基本方針が決められており、そのなかのひとつに"地域の方々への感謝を"というような主旨がある*1。しばらく前にとある施設の近隣地域の方々との懇談の場に同席する機会があり、そのお話を聞いているうちに、その指針の云わんとしていることがじんわりと身にしみてきた。

勤務先法人が運営している施設はそれぞれに地域との関係性をつくるための努力をしているし、その甲斐はあっていずれの施設も周辺の住民の方との信頼関係を築いている。だけど近隣の方々は、福祉施設の意義や必要性は十分に理解しつつも、実際上では施設があるがゆえのマイナス面を許容してくれている側面はある。私たちは、目の前の仕事の慌ただしさに追われて、実際の利用者ではない近隣の住民の生活については常に目を向ける余裕を持つことは難しくなっているのではないだろうか。また、法人創設者がその仕事を始めた頃に比べたらもちろんのこと、十数年前に比べてさえ、"福祉の仕事""介護の仕事"がよくも悪しくも社会的な認知を受けるにつれて、自分たちの気持ちのなかに"地域を支える仕事をしているのだ(だから多少のことは理解されて当然)"という意識が全くないとは言えなくなっているのではないだろうか。

近隣住民や近隣企業で働く人々への配慮が常に心のなかにあれば、たとえば車の出入りやアイドリングはもちろん、台車を使うときの騒音などにまで気をつけようという意識は起きるだろう。種々様々な事情はあれども、他施設の車両や職員の車を気軽に駐車しようという気持ちは起きないのではないだろうか。そのときに少しでも地域に普通に暮らしている住民やその近隣で働く人々への気持ちを想像することができれば、やむを得ずに行わざるを得ない場合でも周囲に対する気遣いが自然にあらわれ、それはまた自然に周囲へと伝わっていくのではないだろうか。

社会福祉の仕事は確かに地域を支える仕事だ。でも同時に地域に支えられて、その仕事を行えているのだということを決して忘れてはいけない。自戒を込めて。

*1:あえて正確な表現は控えています。為念。