"スウェーデンの回復が早い理由"

愛読しているブログの"スウェーデンの今"の筆者である佐藤吉宗氏が、現在発売されている"週刊東洋経済(2010/4/24特大号)"に"スウェーデンの回復が早い理由"というコラムを書かれていると知り、早速書店で購入。内容は"スウェーデンが金融危機からのいち早い回復ぶりを見せている"理由についてなのだけど、非常に興味深いコラムだった。

全文を引用するわけにもいかないので、最も印象深い箇所のみ紹介する。今回の金融危機に対する政府の対応についての述べられている文章。

スウェーデンは外需に依存する小国であり(輸出依存度約50%、日本は約17%)、日本のような公共事業やエコカー補助金といった需要喚起政策はとられなかった。代わりに失業手当や職業斡旋、労働訓練を提供するための予算を増額。また社会人などの進学希望者増に応えるため、大学向け予算も大幅に拡大した。企業に対して行われたのは、R&Dに対する助成金の増額だった。
さらに地方自治体への特別財政支援を行った。スウェーデンでは自治体が自主財源で社会サービスを提供するが、地方税収が減少したため、これを放置すればサービス低下や担い手である地方公務員の解雇につながる懸念があったためだ。

(出典:週刊東洋経済(2010/4/24特大号),73頁)

スウェーデン社会も決してバラ色ではなく、佐藤氏が最後に触れられているとおり失業保険の問題やその他の課題も多く抱えている。他の雑誌を読めば、スウェーデンの高福祉高負担に対する批判的文章もたくさん目につく(スウェーデンの社会政策批判を行う学者は、アメリカと日本がほとんどとも聞く。真偽のほどは定かではないけれど)。ただ少なくとも社会福祉の視点からは、スウェーデンと日本の金融政策も含めた各種政策における"人間の生活"に対する位置づけの違いには、嘆息せざるをえないのだ。

翻って昨日"障害者自立支援法"の違憲訴訟が和解し、集団訴訟がすべて終結したと報道された。今年1月に"障害者自立支援法"が実質的に廃止されたことは、最近の社会保障関係としては非常に珍しい一筋の光明を感じるトピックである。今後の新法の検討がどのように進められ、財源問題がどのように解決されていくのか、また介護保険法等のその他の応益負担の制度についてどのように影響を及ぼしていくのかについては注視していかなくてはならない。

社会福祉のあり方を考えていると結局財源問題に突き当たるので、経済学を学びなおすことの必要性を痛感している今日この頃。今回の"週刊東洋経済"には、佐藤氏のコラムが掲載されていた頁の"社会保障が「経済政策」になった理由"(pp.72-73)や、その次の頁の伊藤光晴氏の"付加価値税と累進課税での所得の再分配政策を進めよ"(pp.74-75)は、それぞれ見開き2頁で、知りたい内容がまとめられていたので、非常に参考になった。

週刊 東洋経済 2010年 4/24号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2010年 4/24号 [雑誌]