捨てるという快楽

私の自宅に来たことのある友人たちはよく知っている通り、私はモノを捨てられない傾向があり、自宅には紙や資料を中心にモノがあふれている。収納が少ない造りのせいもあるけれど、明らかに私の捨てられなさ、もったいない癖のためによるところが大きい。

もともとモノがあふれていた私の住まいに相方氏が引っ越してきたため、相方氏の荷物はほとんど収納からはみだしており、同居開始当初から可哀想なことになっていた。幸いなことに、相方氏は引越しを繰り返しているためか、あまりモノに執着しないので、何とかギリギリ生活スペースを確保できていたというのが実情。

ところで相方氏の捨て方というのは豪快で、例えば昨日新しい枕を購入したら、昨日の朝まで彼自身の頭が乗っていた枕をぽいっとゴミ袋にそのまま捨てていた。いや、確かに今後使用しない予定の以前の枕を保管しておく空間的余裕はないのだけど、おそらく少なくともこれまでの私だったらそのまま即日に捨てることはできない。その光景を見ていて、文字通り目からうろこが落ちた。必要がないモノは捨てないと片付かないじゃん、ということを今更のように理解した瞬間だった。本当に当たり前のことなのだけど、今までの自分にしてみると、コペルニクス的転回だったのである。

このコペルニクス的転回の訪れには前段階があり、退院後に久しぶりに帰宅したときに、何だかあまりのモノの多さにうんざりしたというのがひとつ。結婚して、妊娠して、"本当に大切なモノはそんなに多くないな"ということに気がついたのがひとつ。当面研究用の資料や書籍を使用する予定がなくなったのがひとつ。

そんなわけで昨夜は目に付く必要のないモノを容赦なく捨て始め、今日は本格的にモノを捨てて片付ける作業を開始した。相方氏の助言により、ゴミ袋に廃棄するときに"捨て!"と声に出して捨てると、これが楽しい。なんだかどんどん自分の身が軽くなっていくような気がして、ちょうどよいストレス発散になるような。生まれて初めて"捨てる"という快楽を知ったように思うのだ。さ、明日も楽しく捨てようっと。