“MINAMATA“を観てきました

2021年11月1日(月)

月初の月曜日なのに、公休シフトだったので有り難くお休み。以前から観たかった映画“MINAMATA“がちょうどよい時間に上映していたので、単身観にいく。映画館で映画観るのも2年以上ぶりかな。前回観たのは何の作品だったか思い出せないほど。

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今年観るのがこの一本だけであったとしても観ることができてよかったと思える作品だった。当事者のひとびとにとっては描かれている以上の葛藤や複雑すぎるものがあることは容易に想像できる。その意味ではあくまで、"よそもの"の視点で“海外“で製作されたフィクションである。あれ?と思って帰りに調べたら映画の中の重要なエピソードにも完全なフィクションがあるとのこと。そもそもユージン・スミス氏自身の描写もわかりやすくデフォルメされている点があるだろう。そのことに賛否両論はあると思うけれど、商業映画として成立するための選択だったのではないか、と思ったりする。

完全な事実ベースではなく、例え事実に基づくフィクションであるにせよ、この作品がいまの日本で上映されることは、とても大きな意義があり、少なくともわたしは今日映画館で観ることができて、ほんとうによかった。できることならもう一度観たい。できれば子どもたちにも観せたい。

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ごく私的な感想としては、ジーンことユージン・スミス氏の暗室の場面。わたしの父は写真家で、実家には仕事場=暗室がある。そこは聖域で家族でも勝手に立ち入ることは許されなかった。ほんの数回父の現像しているところを見せてもらったことがあり、映画の暗室の場面で、そのときの記憶がぶわーっとあの独特の匂いとともに鮮明に蘇った。作品製作中の父は、普段の父とは別人で、映画のスミス氏に近いものがあった。父は同じくベビースモーカーだけど、暗室のなかは禁煙にしていたはず。咥え煙草での現像作業は映画の描写としてはありだけど、果たしてこれも事実に則しているのだろうかとふと疑問に思ったり。

さらに余談だけど、数年前、暗室に隣接した事務室にいる父に話しかけるため、サニスケがノックもせずに立ち入り、それを許す父の姿に、"えええええー⁉︎"と驚愕したことがある。わたしや兄がそんなことしたらひどく叱られていただろうと思うと、孫は特別なのか、父が丸くなったのか。

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ネタバレになるけど、封印されたはずの一枚の写真。その実物が作中にでてくることを新聞のアイリーン・スミス氏のインタビュー記事で知り、どうしても観たくなった。“あの作品をださないと模倣(再現場面)だけが後世に残されてしまう。それだけは避けたかった“という一言が印象に残っている。そしてその作品は圧巻だった。ただ映画でその背景を伝えられていたためにその一枚の意味がいっそう伝わってきたのかもしれない。

その一枚を含む作品群が、短い時間とはいえ画面に映し出されていることで、“その瞬間“を切り取る写真の力が伝わる映画となっていた。そしてエンドロールが、他人事ではなく私たち自身の問題だと突きつけてきた。

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