"プロフェショナル 仕事の流儀"(2008年3月10日放映分)

昨日の朝刊の番組表でみかけてすぐに録画しておいた昨夜放映の"プロフェショナル 仕事の流儀"を、今日になって見ることができた。番組表で"ホームレス支援のプロ"とのことだったので、もやいの湯浅誠さんかと思っていたら、奥田知志さんだった。

奥田知志さんは、北九州市を中心にホームレス支援を行っている。以前に新聞で読んだ記事では、もともとは牧師さんで、牧師の仕事とNPO法人の代表の仕事の二足の草鞋が無理になって、周囲がNPO法人を辞めると思っていたのに牧師を辞めたという方である。

番組でも、新聞記事でも何も触れられていなかったけれど、生活保護行政の漏給防止が厳しくて餓死事件などが多々起こっている"北九州市"で、どうやって行政の協力もとりつけながら、ホームレス支援を行っているのかというところがもう少し詳しく知りたかった。

奥田さんが"ホームレスとは、ハウスレスだけでなく、そのことによって家族をはじめとする絆を失った人々"と話されていた。ホームレスだけでなく、社会福祉の対象は何かと考えるときに、第一にはこの"絆を失った人々"になるのではないだろうか。

病気になっても、職を失っても、障碍や高齢で日常生活に手助けが必要になっても、支えてくれる"絆"さえあれば、生活は継続できる。ただ問題は、そもそも絆を持たない/希薄な人々や、絆があっても、何らかの原因(病気、失業、介護等)で大切な絆に負荷がかかりすぎてしまい、失ってしまう人々だ。現在盛んに報道されている家族介護者による殺人事件、それから子どもに対する虐待の問題なども、つきつめていけば根っこは同じだ。

普段は制度にがんじがらめになった領域で仕事をせざるをえないけれど、奥田さんの仕事はNPO法人化されているとはいえ、制度外の仕事であり、ほんの少しだけ垣間見て、時代は大きく違うけど、もしかしたら祖母が仕事を始めたときもこんな感じだったのしれないなぁなどとふと思った。

もうひとつ深く印象に残ったのは、"無理するな、楽するな"という奥田さんのコトバである。奥田さんは家や仕事と絆を失った人々に、住む場所を提供し、生活保護受給につなげて生活を建て直し、就職先を斡旋し、社会復帰を支援する。自立した後も、自宅を訪問し、かかわり続ける。だけど、一方で、口では就職するといいつつもヒゲを剃らない"楽をしようとする"相手に対しては、"それが就職したい顔か?"のような叱咤のコトバをかける。このバランスがスゴイ。そしてそれが叱咤のコトバであっても、その表現や口調がどこまでも温かいのがスゴイ。

私は対人援助の現場からは離れて久しいし、自分には"スタッフのためのスタッフ"の裏方業務が向いていると思うけれど、"この人の仕事を近くにみて、対人援助の現場に戻ってみたい!!"などとちらりと思ってしまった。そんなことは、多分初めてだ。

あと"無理するな、楽するな"というコトバは、おそらく二重の意味が含まれていて、支援をする側のスタンスとしても重要なのではないだろうか。

この番組では毎回"プロフェショナルとは?"の質問をしており、奥田さんの回答。

使命という風が吹いたときに、それに身をゆだねることができる人だと思います。そして、そのときに、自分の思いとか考えとか、都合とか好きと嫌いというものをやっぱり一部断念することができる人。それがプロだというふうに考えています。(番組サイトより)

何が自分の業務なのかを考え、業務を業務として取り組むこと。そういう仕事をしなくてはならない。