新婦と呼ばれた日

会場の担当者や挙式会場コーディネーター、美容担当者等々に言われていたのは、「前日は良く眠ってください」「当日は水分を控えてください」の2つだったのだけど、後者はともかく前者はそうそう実行できるわけではなく、前夜は久しぶりに寝つきのめちゃ悪い夜だった。それでも何とか5時間は睡眠を確保し、6時30分に起床。心配していた空模様はかろうじて雨があがった様子。その後、雨は降ったり止んだりだったけれど、前日のように土砂降りではなかったのは幸運。

両親とともに会場のホテルに泊まって独身最後の夜を過ごしたので、両親と一緒に朝食へ。緊張しているというか、浮き足立っているというか、食欲なんてカケラもないものだ。

新婦は、通常の着替えと対して変わらない新郎とは違い、準備にとても時間がかかる。私はドレスなので2時間前からの準備開始、和装の場合だと3時間前らしい。午後からの挙式にしておいて良かった。というわけで、9時にホテルの部屋に美容担当のスタイリストさんが到着。個室でゆっくり準備をしたかったので、ホテルの美容室ではなく外注をお願いしたのだけど、これは正解。終日ずっと文字通り黒子をしてくれたので、とても安心だったし、色々救われた。大感謝。

11時少し前に準備が完了。エステの効果があったのか、さすがにプロの手によるメイクのためか、鏡のなかの自分はちゃんと"新婦"になっているのがなんとも不思議。隣の部屋に、本人の両親と泊まっていた"新郎"であるところの相方氏を呼んでもらう。

実は衣装に関しては、相方氏には一切内緒にしておいた。これは後から相方氏に"内緒にしておいてもらって良かった"と喜ばれたので、嬉しい。ともかく、ドアを開けた相方氏は何故か固まる。こちらもなんとも面映いので、スタイリストさんに"なんだか他人行儀ね〜"と笑われる状態に陥ってしまった。

2人だけの写真をホテル内で撮影し、明治学院白金チャペルに向かう。普段通学のためにバスで通っている見慣れた道を、ベールをつけてハイヤーから眺めるのはとても不思議な気持ち。新郎新婦の控え室はインブリー館で、実は初めて足を踏み入れたのだけど、とても歴史のある建物で趣のある控え室だった。ここで両親と相方氏、合流した兄夫妻、スタイリストさんで軽食を摂る。こういうときにバナナは食べやすいな〜とくだらないことを思ったり。

しばらく休憩をとれたので気持ちが少し落ち着く。やはりこういうときは時間をゆっくりと確保するのが重要と知る。で、チャペル内外での撮影。今回最も重点的に費用をかけたのは実は写真なのだ。写真はずっと残るから。実家には祖母や両親の若い頃の写真なども残っており、それは貴重な記録でずっと思い出として引き継がれていくはず。とはいえ、1日で一体フィルム何本分の写真を撮られたのだろうと思うほどに大量のシャッターを切られた日であった。

撮影後はリハーサル。司祭牧師の先生の自信の表れなのか、リハーサルがとてもリハーサルになっていなかったので、関係者一同少し不安に陥ったのが鮮烈な印象。でも本番は、失礼ながらまるで目が覚めたかのように素晴らしい挙式を司っていただいたので、さすがだと感服。

明治学院チャペルでの挙式は、修士課程の入学式以来の密かな憧れで、自分にとっては教会式というより学院式という感じだったのだけど、大正5年築の本物のチャペルで行われる、本物の教会式は、本当に厳かだった。私は信者ではないけれど、小さい頃からキリスト教が比較的身近な環境だったので、"神様"と、列席の皆様に認めていただけて、"あぁ、結婚するんだなあ"と何だかやたらに胸が詰まってしまった。誓いのコトバを聞くのと言うのとでは大違いだね、と後で相方氏と話したのだけど、全く違う。後から聞くと、相方氏も結構感極まっていたみたいだけど、でもとても力強く誓いのコトバを述べてくれたので、非常に心強かったし嬉しかった。ので、私もそのとき出来うる限りはっきりと述べた、つもり。

挙式会場が披露宴会場と離れてしまって移動があり申し訳なかったけれど、列席してくださった皆さんにも喜んでいただけて、とてもとても嬉しかった。時間的には30分だけど、本当にあの時間が"結婚式"だったのだと感じている。

厳粛な式が終了した後、両親と相方氏、スタイリストさんと一緒に再びホテルに戻る。列席の皆様は別便でホテルへ。当然先に出発した私たちが先に到着すると思いきや、ホテル到着時には列席者一同が先に着いており、内心めちゃ焦る。この到着順序さえ守られていれば、と悔やむことが生じるのだけど、今となっては仕方がない。

とにかくこのときは私は寒いし、緊張が解けて何だか気持ち悪くなるしで、自分のことで精一杯。控え室に顔を出して挨拶だけかろうじて行い、自分の部屋に一旦撤収。同じ部屋で休憩していた兄夫妻には申し訳ないことをしてしまった。さらに控え室等は相方氏と両親にまかせきりになってしまったのだけど、この間相方氏が諸々奮闘してくれたことを後から聞いて、感謝。

今まで他のヒトの結婚式に参加してきて、挙式と披露宴の空き時間は何故あるのだろう?と疑問に感じたことがあったのだけど、あの時間は新婦が気持ちと体調を落ち着けるためにあったのだと知る。実際的には、お化粧直しとかヘアメイク直しとかもあったけど。でも私には、あの時間があったから、その後最後までもったのだと思う。何につけても自分で体験して、初めて知ることって多い。特に結婚関係は多い。だから楽しいのかも。

明治学院からホテルまでの列席者の皆様の移動時間が予想外に短かったことあり、お待たせする時間がかなり長くなってしまったのだけど、和装前撮の写真をおいたり、かなり文字量の多い写真入プロフィールを作成してお配りしたので、ギリギリ時間は潰していただけた、と思いたい。

披露宴兼夕食会は、列席者が親族と親族同様の親しい方々だけなので、とにかく楽しく和やかで気取らない会にしたいと、打ち合わせのときに司会者に"斬新"といわれた席のつくりにし、あえて"夕食会"にした。新郎新婦は主役と言われるけれど、実際はちっともそんな気持ちにならず、最後までタイムキーパーしたり裏方をしていたような気がする。

細かいハプニングは起こったし、不手際はあったけれど、相方氏と2人で相談をしてアイデアを出し合って、ひとつひとつ決めて作り上げた部分はうまくいったように思うので、企画側としては嬉しいことだ。まだ3月に主に私側の職場と友人関係を招待したパーティ、時期は未定だけど相方氏地元でのお披露目がある予定なので、それぞれ主旨は異なるけど楽しく過ごすつもり。