"デブになってしまった男の話"

昨日発売でまさしく入手したばかりの鈴木剛介"デブになってしまった男の話"(求龍堂,2006)を一気に読了。昨夜にポコンたんが眠った後で、お風呂に入ろうと思ってふと手にとったのが運の尽き。文字が比較的大きくて行間も比較的空いていて読みやすいせいもあったけれど、物語に引き込まれて、そのまま最後まで本当に一気に読み終えてしまった。"もう寝る支度をしなくちゃー"と思いつつ、その理性に抗えないほど面白い物語を読めることは、非常なる幸せ。

物語は、"イケメンモテモテ男性がある日デブになってしまう話"とあらすじをまとめてしまえば単純。あえて言えば、小池田マヤ"すぎなレボリューション"(全12巻,講談社)に似ているとも言える。ただ、作者の鈴木剛介氏が自分のごく身近な知人である欲目を差し引いても、"デブになってしまった男の話"の方が"すぎレボ"より格段に面白い。

前作の"自殺同盟軍"(角川書店,2005)を読んだときにも感じたけれど、鈴木剛介氏の文章は歯切れの良いリズム感があり、それが文章に引き込まれる大きな力となっている。多分、そのリズム感が合わないヒトには苦手な文章となるだろう。あと、石田衣良などの文章でも使われているテクニックだろうけど、鈴木剛介氏は特定商品名とその商品に付随しておそらく世間一般的に共有されている"イメージ"を活用するのが上手いのだとあらためて気が付いた。あの場面で登場するのは、"うまかん棒"でなくては、"サカゼン"でなくては、ならないのだ。むしろ、その必然を紡いでいくのが"小説家"の世界構築力なのかもしれない。

"デブになってしまった男の話"は、発売されて初めて読んだので、純粋に一読者として読むことができた。そして、心から面白いと思った。そのことがとても嬉しい。個人的には"痛々しさ"が最も薄いこともあり、氏の作品のなかで一番好きな物語。あまりに一気に読んでしまったので、近日中にまた読み返すつもり。

デブになってしまった男の話

デブになってしまった男の話

自殺同盟軍

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…すぎなレボリューション 1 (モーニングワイドコミックス)

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